深い専門性に基づき産業構造・将来動向を熟考するコンサルティングで日本の製造業の変革をリードする

グローバル競争の激化とデジタル化による価値の転換にさらされる日本の製造業。NTTデータグループのフォーティエンスコンサルティングで、長年にわたり製造業の支援に取り組んできた須藤淳一は、変革の鍵として「自前主義と垂直統合からの脱却」を挙げる。生成AI(人工知能)を用いた技術継承や人手不足へのアプローチ、企業同士がつながり合う国産データスペースの取り組みなど、現場に向き合って培われた実践知と先進テクノロジーを駆使した変革について話を聞いた。

現場の悲鳴が示す危機
“前例踏襲で新しい価値を組み込めないモノづくり”からの脱却を

「『若手が採用できない、中途採用しても定着しない。うちの会社は古いからいけないのかね……』。製造業のお客様から、過去はあまり聞かれなかった人材に関する切実な声を聞くことが本当に多いですね」

そう語るのは、NTTデータグループのコンサルティングファーム「フォーティエンスコンサルティング」(旧社名クニエ)で、約20年にわたり製造業に対するコンサルティングチームを率いる須藤淳一だ。

製造業では今後、テスラのようなフィジカル面での構造刷新とデジタル技術を融合させた企業が、製品価値を変え、ルールを再定義することで、既存メーカーのビジネスモデルが立ち行かなくなる状況が多数想定されている。

「可能性として、日本の製造業は巨大なデジタルプラットフォーム企業の川下で、ネットワークに接続される『単なる部品としてのハードウェア製品』を供給する存在になりかねません。この2~3年で、フィジカルとデジタルが融合しネットワーク化する製品構造の変化に、どう対応するのかの判断を迫られる」と須藤は警鐘を鳴らす。

では、各社はどこへ向かうべきか。

「『勝ち筋』は1つではありませんが、すべての変革に共通する鍵があります。それは、前例踏襲の『自前主義』という垂直統合モデルの発想から、いかに抜け出すかです。具体的には、どこを自前でやるのか、あえてやらない領域を作れるのか、という線引きがポイントになります。

さらには製品の販売で終わるのではなく、顧客の利用データやサービス利用履歴などをつなぎ、販売後も継続的にビジネス価値を創出し、マネタイズできるかどうか。こうした、必要に応じて社外とも連携し、長期の顧客接点を生かすビジネスモデルへの変革が、日本の製造業が生まれ変わるためのヒントだと考えています」

その言葉には、確かな実績に裏打ちされた重みがある。フォーティエンスコンサルティングは2009年の設立以来、製造業支援を核に成長。現在、売上の65%をグローバル製造業が占め、リピート率は77%に達する。

なぜ変革は進まないのか
フィジカルとデジタルの融合を阻む3つの壁を越える必要性

優秀な人材と技術を持つ日本の製造業が、なぜ苦境に立たされているのか。須藤は「変革を阻む、見えざる3つの壁がある」と指摘する。

「1つめは『思想の壁』です。『品質の良いモノ(ハードウェア)が付加価値』『過去より良いモノを作れば売れる』という前例踏襲主義です。顧客の考える価値が、ハードウェアのスペックではなく、制御ソフトウェアやアフターサービスに移っているにもかかわらず、経営資源を積極的にシフトできないという点です。

2つめは『信頼の壁』。問題が発生した『いざ』というとき、AIやシステムが示すデータなどの結果よりも、ベテランの『経験や勘』が優先されてしまうという文化です。これでは生産性向上は望めません。

3つめは『理解の壁』。これは開発・設計・製造・営業が自部門内でできる対策を優先し、解決すべき状況の本質を相互に理解する取り組みが、機能しなくなっていることを指します。

情報共有のためのITツールは導入されていますが、この壁が原因で従来の価値構造を変える取り組みにつなげられていません」

ディーラー全廃と直販シフトへの切り札提示
フォーサイトで示す次の一手

では、これらの壁をいかにして乗り越え、「新しいビジネス価値」を作り出すのか。

「思想の壁」を打ち破るために、須藤のチームが中核に据えているのが、「フォーサイト起点のコンサルティング」だ。

「お客様が今見えていること・困っていることをそのまま受け入れて、施策を提示し解決するだけでは、私たちの価値はありません」と須藤は語る。

「短期的な視点ではなく、産業構造や技術の変化予測などから『将来起こる変化に順応できる未来のあるべき姿』をお客様と共に描き、そこから逆算して『今やるべきこと』『やらないこと』を明確にして、プロジェクトを推進する。これこそ私たちが大切にしているコンサルティングスタイルです」

こうしたスタンスを象徴するのが、ある産業機械メーカーとのプロジェクトだ。当初、顧客からの要望は「ディーラー経由で提供している保守サポートの仕組みを見直すこと」といった現事業の延長線上のものだった。だが、須藤のチームは、アフターサービスで継続的に稼ぐという未来のあるべき姿を描き、「ディーラーを介さない直販モデルへの変革」という、より本質的な仮説をぶつけた。

「製品の『売り切り』という販売重視のビジネスから、保守サポートを通じて顧客接点を維持し、アフターサービスで収益を上げ続ける、新しいビジネスモデルへの転換を意味します。ディーラー網を維持することが主たる業務だった営業部門の強い反発は必至でした」

短期的な痛みを伴ってでも、顧客の未来にとって本質的な変革を提示し、遂行を支援する。

「フォーサイト起点を突き詰めること、そこまでの道筋を施策と共に示すことが、生成AIとの壁打ちからは得られない、私たちの核となる価値と思っています」と須藤は語る。

生成AIで「ベテランの叡智」を「全社の共有資産」に変える

さらに信頼の壁や理解の壁を打ち破るのに寄与するNTTデータグループらしいデジタル活用の知見があるのも大きな強みだ。

ある装置製造企業では、過去の膨大な技術文書や保守サービスの情報をLLM(大規模言語モデル)で解析。それらを因果関係で紐づけた「ナレッジグラフ/データグラフ」と呼ばれる知識体系を構築するような取り組みを行っている。このグラフが構造的なノウハウ集となり、生成AIを通じてユーザーは専門的な最適解を導き出すことが可能になる。

「このデータグラフとローカル生成AIのかけ合わせにより、若手でもベテランの技(勘)を習得でき、自律的な問題解決が可能となります。今後は異なる製品や企業の技術情報も反映し、新しい発想や気付きを促すことも期待できると考えています」

LLMに学習させる技術用語や数式の意味を理解できる製造業出身の専門家がいてこそ、踏み込んだ生成AI活用の提言ができる。これも、フォーティエンスの強みである。

図1:データグラフの例

「一社」の壁を越える、
データスペースを通じた産業間連携基盤の確立を

そして、自前主義から脱却し、個社が強みを持ち寄りながら安全につながり合うための「共創型」プラットフォームの実現にも、須藤はすでに取り掛かっている。それが、経済産業省主導で実装を進めているデータスペース構想「ウラノス・エコシステム」だ。

「『共創』という言葉が語られるようになって久しいですが、実際にその取り組みを実現し、ビジネスを構築するのは非常に困難です。一方で欧州では自動車業界の『Catena-X』など、業界単位での共創プラットフォームとしてデータスペース活用が急速に進んでいます」と須藤は危機感を募らせる。

この国際的な潮流に乗り遅れ、グローバルなサプライチェーンから弾き出されかねない。そうした危機感から、国が主導して構築を進めているのが、この日本独自の産業間データ連携基盤である。

「これは、日本の国際競争力を維持するために不可欠とも言えます。NTTデータグループが開発に名乗りをあげ、フォーティエンスは、初期の戦略や構想策定に加え、エコシステムが機能するための制度設計といった具体的な運用にも携わっています」

フォーティエンスが変革を実現できる理由

これほどの大胆な変革を机上の空論で終わらせない理由。それはチームの「専門性」と、会社の「基盤」にある。

「私のチームを構成するメンバーの7割以上が製造業出身者です。前職での“もっとこうすればよかった”という経験と“改革にチャレンジしたい”という強い想いを原動力に、業界の変革に貢献しようという熱意を持ったメンバーがほとんどです」と須藤は語る。

フォーティエンスには、その情熱と知見を組織の力にする、独自の業種分析体系がある。それは、製品の大きさ・設備の規模や設計から生産などの管理手法の違いによって16業種に分類し、さらに5つのグループにセグメントして必要となる変革の仮説を整理し、提案や施策提示に用いている。

「チーム内でノウハウを効率的に蓄積するだけではなく、『精密機器の品質管理手法やサイクルを長期プロジェクト製造型である重工業にも応用する』といった、業界の垣根を越えた施策や考え方の横展開も可能になります。多様な製造業に対し、ここまで知見を体系化できているファームは他にないと自負しています」

図2:フォーティエンス独自の製造業 業種分類

この深い専門性に加え、NTTデータグループであることが、挑戦を支えるもう1つの柱だ。

「データスペースのような息の長い挑戦を、短期的利益志向に陥ることなく継続できるのも、NTTデータの安定基盤やアセットを活用し、リスクを最小限に抑えた遂行が可能だからです」と須藤は語る。

顧客に向き合い、戦略立案から施策の実行までをやり抜くスタンスが顧客から強く支持され、フォーティエンスの売り上げは5年で2倍に成長。現在ではフォーチュングローバル500選出の日本企業の85%を顧客に持つという実績につながっている。

日本の製造業が世界で戦い続けるために、須藤は最後にこう締めくくった。

「我々は、当社のアジア5カ国の拠点とNTTデータグループの広範なネットワークを活用することで、拡大するお客様のグローバルな変革プロジェクトも最後まで責任を持って支援していきます。将来動向を見据え、製造業の個社の変革だけでなく産業全体の魅力度を底上げする役割も担っていきたいと思います」


須藤 淳一

フォーティエンスコンサルティング株式会社
執行役員 製造インダストリー本部長
製造業向けコンサルティングサービスリーダーとして自動車、自動車部品、重工業、工作機械、産業機械等の顧客課題に精通。R&Dや設計領域の業務改革/システム導入、工場全体の生産革新、インダストリー横断のプラットフォームビジネス企画など、製造業だけでなく業界団体や省庁と連携し、多岐にわたるプロジェクトをリードしている。共著に『フォーサイト起点の社会イノベーション』(日本経済新聞出版)、訳書に『フュージョンストラテジー』(東洋経済新報社)がある。

詳細プロフィール・支援実績
フォーティエンスの製造業コンサルティングサービス
データスペース・データグラフ等を用いた「ものづくり革新/Cyber Physical System」


※本記事は日本経済新聞電子版(2025年11月掲載)より転載しています。
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