事業環境の変化と新規事業開発の必要性
近年、事業環境の不確実性が一層高まり、既存事業に依存した経営の継続が困難となっています。このような状況下において持続的な成長を実現するためには、新たな事業の柱を創出し、事業ポートフォリオを適宜見直すことが不可欠です。
特に2010年代前半から後半にかけて、デザイン思考やリーンスタートアップといった先進的な事業開発手法が注目を集めるようになり、それに伴い新規事業への期待も一段と高まりました。
新規事業開発の成果
その結果、一定の成果が得られ、企業における事業開発のアプローチに変化が見られるようになりました。
- 顧客視点の醸成
・リーンスタートアップやデザイン思考の導入により、顧客のペインポイントを起点とした事業開発が進展
・大企業にありがちな内向きの検討を打破し、顧客視点を重視する意識改革の契機となる
- 企業文化の変革
・新規事業開発への取り組みを通じて、挑戦を奨励する企業文化の醸成が促進
・会社が機会を提供することで、従業員のエンゲージメントや満足度の向上につながる
- 既存事業とのバランス
・既存事業とのカニバリゼーション(共食い)を回避する新規事業のアイディア創出が容易に
課題と今後の展望
一方で、顧客視点を重視した事業開発にはいくつかの課題も浮き彫りになっています
- 事業のスケール化の難しさ
・トップマネジメントが求める規模感に達しないケースが多く、大企業が新規事業を手掛ける意義を見出しにくい
- ベンチャー企業との競争
・ベンチャー企業と競争するための社内体制や仕組みが整備されておらず、柔軟性やスピード面で劣後する
・迅速な意思決定プロセス、適切な評価制度、起業家精神を持つ人材の育成など、多岐にわたる改革が求められる
- 事業創出への結びつき
・事業開発が研修的な取り組みに留まり、実際の事業創出につながらないケースが散見される
大企業ならではの事業開発アプローチ
こうした課題を克服するためには、大企業が有する豊富なアセットを最大限に活用し、ベンチャー企業にはない競争優位性を発揮することが重要です。そのためには、事業視点と顧客視点を融合させた独自の事業開発モデルを確立することが求められます。
今後、大企業が持つアセットと顧客ニーズを的確に組み合わせることで、新たな成長機会を創出し、持続可能な競争力を確立することが不可欠となります。