DX関連の新規製品開発に係る市場調査・VoCリサーチプロジェクト

課題

POINT 1

近年、製薬企業では医薬品の提供にとどまらず、医療全体の質向上に貢献する新たな価値創造が求められており、デジタルヘルスや医療支援ソリューションの開発が加速している。こうした取り組みは、患者の治療効果を最大化し、医療従事者の業務効率を高め、医療費の適正化にも寄与するものであり、製薬企業が医療機関や患者との新たな接点を築く手段としても注目されている。同様に、ITやAI技術を有する企業においても、日本のヘルスケア市場におけるビジネス機会を模索する動きが活発化しており、医療分野への新規参入が進んでいる。

しかしながら、こうしたDX製品の市場投入にあたっては、国ごとに異なる医療制度、診療報酬体系、病院経営の構造などを踏まえた戦略設計が不可欠である。そのため、グローバル企業や新規参入を目指す企業にとっては、制度理解や現場ニーズの把握が大きな課題となっており、慎重な市場検証が求められている。
本プロジェクトのクライアントも、こうした業界の潮流を受けて、医薬品以外の新たな価値提供の一環として、患者の疾患回復過程を支援することを目的としたデジタル製品のプロトタイプ開発を進めていた。日本法人が開発を主導し、技術開発に強みを持つ担当者がプロジェクトを推進する体制であったものの、日本特有の医療制度や診療報酬体系、病院経営の市場構造に関する知見が限られていた。また、最終的な意思決定は国外のチームに委ねられている中、複雑な日本特有の医療保険制度や医療現場の実態が十分に共有されていないことが、製品の方向性や市場投入の判断を難しくする要因となっていた。

こうした背景のもと、製品の市場性を多面的に検証し、現場のニーズを踏まえた具体的な方向性を導き出すことが、次の意思決定に向けた重要なステップとなっていた。

アプローチと結果

POINT 2

1.日本市場の理解促進
本プロジェクトでは、海外の意思決定者に対して、日本の医療制度、医療機関の経営構造、診療報酬体系、医療DX政策などを体系的に整理し、日本特有の医療環境に関する情報提供を行った。特に、日本の医療提供体制が複数の治療フェーズに分かれており、それぞれに制度的な制約や導入可能な技術が異なる点に着目し、製品展開における留意点を明確化した。これにより、クライアントは日本市場における事業展開の前提条件や機会を多面的に理解し、グローバルでの意思決定に向けた共通認識を形成することができた。

2.市場性・現場ニーズの可視化
続いて、製品の市場性と現場ニーズを把握するため、医療機関におけるプロトタイプの実証を通じたユーザー調査(VoC:Voice of Customer)を実施した。複数の医療従事者に対して製品のデモンストレーションとアンケート調査を行い、さらに一部の対象者には詳細なインタビューを実施することで、現場の実態に即した多面的な意見を収集した。
調査では、操作性や業務への適合度、導入に対する期待と懸念、価格感度、既存システムとの連携要件など、製品の受容性に関わる要素を幅広く確認した。特に、意思決定者や現場リーダー層へのインタビューを通じて、医療機関の経営の実情や導入判断に影響を与える要因、現場としての本質的なニーズについて、重要な示唆を得ることができた。これらの調査結果により、現場の医療従事者視点から見た製品の価値や課題が明確になり、開発チームが改善方針を検討するための具体的な材料を得ることができた。

3.製品コンセプトの精緻化
並行して、国内外の競合製品を対象に、機能、価格、導入実績、ユーザー評価などの観点から比較分析を行い、製品ごとの強み・弱みをマッピングすることで、市場における差別化要素や競争上のリスクを整理し、クライアントが狙うべき領域(ホワイトスペース)を特定した。
これらの分析結果とユーザー調査の知見を統合し、既存製品が対応しきれていない課題領域に焦点を当て、差別化可能な機能群を抽出した。短期的には特定の医療フェーズにおける導入を想定した最小限の価値とそれを実現する機能群(MVP:Minimum Value Product)を定義し、長期的には施設間連携や業界全体への価値提供を視野に入れた製品コンセプトのブラッシュアップを行った。これにより、クライアントは具体的な方向性を持って次フェーズに進むための判断材料を獲得し、グローバルでの意思決定に向けた準備を着実に進めることが可能となった。

成功のポイント

POINT 3

•医療機関との信頼関係が土台として構築できている弊社だからこそ、一方的なヒアリングではなく双方向のディスカッションへとつながり、表面的な意見にとどまらず現場の実情や本質的な課題を深く引き出すことができた。

弊社メンバーは医療資格保有者を含み、医療政策や病院運営に精通しており、現場感と体系的な視点を併せ持つコンサルタントとして議論をリードできた。これらは、医療情報システム導入支援や国の医療DX施策支援など、医療分野での豊富な支援実績があったからこそ実現できた支援である。

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